三十代半ばを過ぎた頃、私は鏡を見るたびに深いため息をついていました。額の生え際が後退し、頭頂部の地肌が透けて見える現実に、言いようのない焦燥感と絶望感を抱えていたのです。あらゆる育毛剤やサプリメントを試しては失敗し、最後に辿り着いたのがフィナステリドによる治療でした。服用を開始したその日から、私は自分の頭皮の変化を克明に記録することに決めました。最初の一ヶ月は、期待とは裏腹に抜け毛が増える初期脱毛に襲われ、夜も眠れないほどの不安に駆られましたが、ネット上の経験談や医師の言葉を信じて、震える手で毎日一錠を飲み続けました。三ヶ月が経過した頃、ようやく抜け毛が止まり、頭皮の脂っぽさが軽減されていることに気づきました。しかし、まだ発毛を実感するには至りません。本当の勝負はここからだと言い聞かせ、四ヶ月、五ヶ月と淡々と日々を過ごしました。変化が明確になったのは、半年を過ぎたあたりです。洗面所の強い光の下でも、以前ほど地肌が目立たなくなり、髪に確かなコシが戻ってきたのを感じました。指を通した時の感触が、スカスカとした頼りないものから、弾力のある確かな手応えへと変わっていったのです。そして迎えた服用一年目。私は一年前の自分が見たら信じられないような光景を鏡の中に見つけました。生え際からはしっかりとした黒い毛が立ち上がり、頭頂部の密度は見違えるほどに改善されていました。一年という月日は、絶望を希望に変えるのに十分な時間でした。この一年間、私は誰にも相談できず一人で戦ってきましたが、フィナステリドという静かな相棒だけが私を裏切りませんでした。服用を忘れた日は一日もなく、副作用への不安も、定期的な血液検査で異常がないことを確認することで乗り越えてきました。一年経った今、私は帽子を被らずに街を歩く喜びを噛み締めています。風が吹いても、強い日差しが照りつけても、もう怯える必要はありません。薄毛に悩んだあの日々が、まるで遠い昔の出来事のように感じられますが、この一年の記録を見返すと、そこには科学を信じて自分を律し続けた自分の誇らしい姿がありました。これから治療を始める人たちに伝えたいのは、一年の道のりは決して短くはありませんが、その先には必ず新しい自分が待っているということです。自分を信じて、一歩ずつ進んでいくことの大切さを、この一年間の変化が私に教えてくれました。
髪の悩みを克服した一年間の孤独な記録