日々の生活の中で、シャンプー時やブラッシング時に抜け毛があるのは自然なことです。しかし、その量が異常に増えたり、抜け方に変化が見られたりした場合、それは単なる一時的な現象ではなく、体からの病気の警告サインである可能性を疑うべきです。特に注意が必要なのが、全身性の病気と抜け毛の関連性です。例えば、肝臓病や腎臓病といった慢性的な内臓疾患は、体の代謝機能に大きな影響を与えます。肝臓は栄養素の代謝や解毒、腎臓は老廃物の排泄を担う重要な臓器です。これらの機能が低下すると、体内に有害物質が蓄積したり、髪の成長に必要な栄養素が適切に利用されなくなったりして、抜け毛が増加することがあります。倦怠感やむくみ、食欲不振といった他の症状と同時に抜け毛が見られる場合は、内臓疾患の可能性を考慮すべきです。また、消化器系の病気、特にクローン病や潰瘍性大腸炎のような炎症性腸疾患も、抜け毛の一因となり得ます。これらの病気は、腸の炎症により栄養素の吸収を妨げ、髪の成長に必要なビタミンやミネラルが不足しやすくなります。特に鉄分や亜鉛、ビタミンB群の欠乏は、抜け毛に直結しやすい栄養素です。消化器症状と抜け毛が同時に現れた場合は、消化器専門医への相談も視野に入れるべきでしょう。さらに、稀ではありますが、悪性腫瘍の治療として行われる化学療法(抗がん剤治療)は、毛母細胞の活動を抑制するため、ほぼ確実に抜け毛を引き起こします。これは治療による一時的な副作用であり、治療終了後にはほとんどの場合、髪は再び生えてきますが、患者にとっては精神的な負担が大きいものです。病気の種類によっては、感染症も抜け毛の原因となります。例えば、梅毒の第2期では、特徴的な皮疹とともに、全身の毛が抜ける「梅毒性脱毛」が見られることがあります。これは、早期に診断し適切な治療を行えば、改善が期待できます。抜け毛は、私たちの健康状態を映し出すバロメーターの一つです。普段と違う抜け毛に気づいた場合は、決して軽視せず、速やかに医療機関を受診し、その原因を究明することが、自身の健康を守る上で非常に重要です。
抜け毛の異常は病気の警告かもしれません