縮毛矯正をかけた後の、あの針で刺したような真っ直ぐさと、引き換えに失われる根元のふんわり感。多くの方が経験するこの「ボリュームダウン」現象は、なぜ起こるのでしょうか。その答えは、縮毛矯正が髪の内部構造を根本的に作り変える化学的なプロセスに隠されています。まず、私たちの髪の毛が「くせ毛」になるのは、髪の主成分であるケラチンタンパク質を構成するアミノ酸の結合、特に「シスチン結合(S-S結合)」が、髪の内部で不均一に、ねじれた位置で結びついているためです。このねじれが、髪一本一本にうねりや縮れを生み出しています。縮毛矯正のプロセスは、このねじれた結合を一度リセットし、真っ直ぐな状態で再固定する作業です。最初のステップで使われる1剤(還元剤)は、このシスチン結合を強制的に切断する役割を担います。髪の内部の骨格が一時的に失われ、ふにゃふにゃの状態になるのです。次のステップでは、高温のヘアアイロンを使って髪を真っ直ぐに伸ばします。この時、髪は熱によって物理的に扁平な形に整えられます。円筒状だった髪が、平たいリボンのような形にプレスされるイメージです。そして最後のステップで使われる2剤(酸化剤)が、切断されていたシスチン結合を、アイロンで伸ばされた真っ直ぐな位置で再び強力に結びつけます。この一連のプロセスにより、髪は形状記憶され、ストレートな状態が維持されるのです。ボリュームダウンが起こる直接的な原因は、この「根元からの矯正」と「髪の扁平化」にあります。くせ毛が本来持っていた凹凸や波打ちがなくなり、髪が根元からストレートになることで、髪と髪の間に存在していた隙間が失われます。さらに、一本一本の髪が扁平になることで、全体としてのかさが減り、頭皮に張り付くようなシルエットになってしまうのです。これは、施術が成功している証拠とも言えますが、この視覚的な変化が「薄毛に見える」という悩みにつながるわけです。
縮毛矯正後のボリュームダウンはなぜ起こるのか