鏡を見るたびに増える抜け毛に不安を感じることは少なくありません。もし「これは単なる抜け毛ではない、何か病気のサインなのでは」と感じたら、その直感は非常に重要です。自己判断で市販の育毛剤を試す前に、まずは医療機関を受診することを強くお勧めします。特に、急激に抜け毛が増えた、部分的にごっそり抜けた、頭皮に炎症や痛みがある、体調不良を伴うといった場合は、専門医の診察が不可欠です。皮膚科医は、抜け毛の原因を特定するための最初の窓口となります。医師は、まず問診を通じて、あなたの生活習慣、既往歴、服用中の薬、抜け毛の始まった時期や経過、家族歴などを詳しく聞き取ります。その後、頭皮の状態を視診し、ダーモスコピーと呼ばれる拡大鏡を用いて毛根や毛穴の状態を詳細に観察することもあります。さらに、血液検査を行い、貧血の有無、甲状腺ホルモンの値、自己免疫疾患の可能性を示す抗体などを調べることが一般的です。場合によっては、頭皮の一部を採取して病理組織検査を行う生検が必要となることもあります。これにより、毛根の炎症の有無や、特定の疾患に特徴的な細胞の変化を確認することができます。これらの検査を通じて、抜け毛が特定の病気によるものなのか、あるいは遺伝的なものやストレスによるものなのかを総合的に判断します。例えば、膠原病の一種である強皮症では、頭皮の血行不良や皮膚の硬化によって脱毛が起こることがありますし、性感染症である梅毒も、後期になると全身性脱毛を引き起こすことがあります。これらの病気は、抜け毛以外にも様々な症状を伴うため、全身状態を総合的に診る必要があります。診断が確定すれば、その病気に合わせた治療が開始されます。甲状腺機能異常であればホルモン剤の服用、鉄欠乏性貧血であれば鉄剤の補給、自己免疫疾患であれば免疫抑制剤の使用など、原因に応じた適切な治療が行われます。早期発見・早期治療は、抜け毛の進行を食い止め、回復を促す上で非常に重要です。一人で悩まず、専門家の力を借りて、安心して治療に取り組むことが、健やかな髪を取り戻すための第一歩となるでしょう。
「抜け毛が病気のサイン」と感じたら