日々の抜け毛は誰にでもある自然な現象ですが、その量や質、抜け方に異変を感じた時、それは体からのSOSかもしれません。単なる加齢やストレスと片付けられない、隠れた病気の兆候である可能性も無視できません。例えば、甲状腺機能の異常は、髪の成長サイクルに大きな影響を与え、抜け毛を増加させることが知られています。甲状腺ホルモンの分泌が過剰あるいは不足することで、髪が細くなったり、全体的に薄くなったりするのです。また、自己免疫疾患の一種である円形脱毛症は、免疫システムが誤って自身の毛根を攻撃することで発症します。突然、コインサイズやそれ以上の範囲でごっそりと髪が抜けるのが特徴で、頭皮だけでなく全身の毛が抜ける汎発性脱毛症へと進行するケースもあります。鉄欠乏性貧血も、女性に多く見られる抜け毛の原因の一つです。体内の鉄分が不足すると、酸素を運ぶヘモグロビンが十分に作られなくなり、毛根への栄養供給が滞り、結果として抜け毛が増えることがあります。この場合、倦怠感やめまいといった他の症状も伴うことが多いです。さらに、真菌感染症による頭部白癬(しらくも)も、炎症を伴う抜け毛を引き起こします。フケやかゆみ、赤みを伴い、感染部位の髪が根元から折れたり抜けたりすることで、部分的な脱毛が見られます。これらの病気は、早期に発見し適切な治療を受けることで、抜け毛の進行を食い止め、改善が期待できます。自己判断で悩まず、異変を感じたら専門医の診察を受けることが何よりも大切です。血液検査や頭皮の視診、問診などによって、抜け毛の原因が病気によるものなのか、それとも他の要因によるものなのかを正確に診断してもらうことができます。専門医は、あなたの症状や生活習慣を詳しく聞き取り、適切な検査を行い、抜け毛の原因を突き止めてくれるでしょう。そして、原因に応じた内服薬や外用薬、生活習慣の改善指導など、多角的なアプローチで治療を進めていきます。抜け毛はデリケートな問題ですが、健康状態を知る上での重要な手がかりにもなり得ます。安易に見過ごさず、自身の体の声に耳を傾ける習慣を持つことが、健やかな髪と体への第一歩となるでしょう。
抜け毛のサインと隠れた病気