抜け毛は、年齢や遺伝、ストレスといった要因がよく知られていますが、実は私たちの体が抱える知られざる変調のサインであることも少なくありません。普段の生活で気づきにくい病気が、抜け毛として表面化することがあるのです。例えば、膠原病の一種である全身性エリテマトーデス(SLE)では、自己免疫によって全身の様々な臓器に炎症が起こりますが、頭皮にも影響を及ぼし、脱毛を引き起こすことがあります。特に頭皮が赤く炎症を起こしたり、瘢痕(はんこん)が残るタイプの脱毛が見られたりする場合は注意が必要です。関節の痛みや発疹、疲労感など、他の全身症状も伴うことが多いです。また、内分泌系の疾患も抜け毛の大きな原因となります。甲状腺機能異常だけでなく、副腎の機能異常も抜け毛に影響を及ぼすことがあります。副腎から分泌されるコルチゾールというホルモンは、ストレス反応に関与していますが、その分泌が過剰になったり不足したりすると、毛周期に乱れが生じ、抜け毛が増えることがあります。Cushing症候群(クッシングしょうこうぐん)などの病気では、顔のむくみや体重増加、高血圧などと共に脱毛が見られることがあります。稀なケースですが、重金属中毒も抜け毛を引き起こす可能性があります。水銀や鉛、タリウムなどの重金属は、体内に蓄積すると様々な毒性を示し、毛根の細胞にダメージを与えて抜け毛を誘発します。特定の職業に従事している方や、汚染された環境にいる方は、この可能性も考慮に入れる必要があります。原因不明の体調不良と抜け毛が同時に現れた場合は、重金属中毒の検査も検討されることがあります。さらに、特定のビタミンやミネラルの過剰摂取も抜け毛の原因となることがあります。例えば、ビタミンAの過剰摂取は、頭痛や吐き気、皮膚の乾燥、そして抜け毛を引き起こすことが知られています。サプリメントを過剰に摂取している場合は、その可能性も考慮すべきです。このように、抜け毛は多岐にわたる病気のサインとして現れることがあります。一つ一つのサインを見逃さず、体の全体的なバランスと照らし合わせながら、専門医の診断を仰ぐことが、早期発見と適切な治療につながります。単なる抜け毛と自己判断せず、体の声に耳を傾ける習慣を持つことが大切です。
抜け毛に潜む?知られざる体の変調