ふと鏡を見た時、いつもと同じ分け目のはずなのに、地肌の見える幅が広くなったように感じる。そんな瞬間は、誰にとっても不安なものです。この「分け目はげ」のように見える現象は、実は一つの原因だけでなく、いくつかの要因が複合的に絡み合っている可能性があります。まず考えられるのが、長年同じ場所で髪を分け続けることによる物理的な負担です。これは「牽引性脱毛症」の一種で、分け目の毛根に常に一定方向への張力がかかることで、毛根が弱り、その部分の髪が細くなったり抜けやすくなったりする状態です。特に、髪を結ぶことが多い女性に見られますが、男性でも長期間同じヘアスタイルを続けることで起こり得ます。次に、特に女性に多いのが「びまん性脱毛症」です。これは、特定の部位が禿げるのではなく、頭髪全体が均等に薄くなる症状で、その結果として分け目が最も目立ちやすくなります。加齢やストレス、過度なダイエットによるホルモンバランスの乱れや栄養不足が主な原因とされています。男性の場合、頭頂部の薄毛(O字はげ)が進行する過程で、分け目周辺の髪も薄くなり、結果として分け目が広がって見えるケースも少なくありません。これはAGA(男性型脱毛症)の典型的なパターンの一つです。そして、見落とされがちなのが「紫外線ダメージ」です。分け目は、頭皮が直接太陽光に晒されるため、顔の数倍もの紫外線を浴びています。紫外線は頭皮の乾燥や炎症、老化を招き、毛母細胞の働きを弱らせることで、抜け毛や薄毛の直接的な原因となります。これらの原因は、一つだけではなく、複数が組み合わさって症状を進行させていることも珍しくありません。分け目が気になり始めたら、まずは自分の生活習慣やヘアケアを見直し、どの原因に当てはまる可能性が高いのかを考えることが、効果的な対策への第一歩となるのです。